晩秋

仙台はそろそろ紅葉も終わりで、夜はかなり冷え込むようになって来た。ついこの前までは、狭い家の庭木が繁り、森の中の様だったのに、今は枯葉が数枚だけ残された枝の向こうに殺風景な日本の住宅街が広がっている。
今年はほとんどを家に引きこもって製作していたので、季節の移り変わりを体感するのは、庭の景色と近所にある郵便局までの道中だけだった。
もよりの郵便局は隣の住宅街にあって、子供の頃によく遊んだ梅田川の小さな橋を渡って行く事になる。帰りは来た道とは逆の道をぐるっとまわって、旧街道(私は山の道と呼んでいる)を通って家に帰る。往復15分程度の私の散歩道だ。
郵便局のある住宅街は、小さい頃はまだ山で、家族できのこ狩りに行った場所だ。川沿いだけは、昔のままに残されていて、橋には大きなどんぐりがいっぱい落ちていた。
帰りに通る旧街道跡は県の保護地域になっており、ところどころが道路をつなげる為に切断されていて、昔のようにまっすぐ通り抜けることはできなくなったのだが、一部分のみ、舗装された状態で通れるようになっている。私は昔からその道が好きで、珠算教室に通っていた頃や、夏休みにプ−ルに行った帰り道なども、よく通っていた。当時でも、この辺ではめずらしかった、大きな農耕馬をつれた人にすれ違ったり、鬱蒼とした沼地があったり、舗装された道とは違う刺激を得られることができた場所だった。
山の道は、なんといっても朝が奇麗で、特に前の晩に雨が降って、晴れた朝は奇麗だ。蜘蛛の巣についた雨の雫が朝日できらきら光っている。もよりの駅に行くにも、この道が近道なのだが、夜は街灯がない為、真っ暗で、そこを通るにはかなりの勇気がいる。夏はとても涼しく(ものすごく蚊にさされるが・・・)、秋は落ち葉を踏み締めて歩ける、小さいながらも季節を感じることのできる山道だ。
最近になって、若い頃には見えていなかった、小さな季節の移り変わりをしみじみ感じるようになった。 雑草としてしか見ていなかった草花達のことも、妙に気になって、足を止めることもしばしば。誰に見せるわけでもなく、そこで咲いている。
若い頃は花屋に並んだ豪華な花に憧れたけど、道ばたに咲いている花達は、とても力強く、頑張っていて、可憐だ。花屋の花にはなれなかったけど、道ばたに咲く花達のように頑張って強く生きていけるかしらんと思う晩秋の散歩道・・・。
今日は曇り空。庭の枯葉を見て、ちょっとだけおセンチと老人が入り交じった気分。こんな気持ちもたぶん今月だけ。12月になれば、街もTVもクリスマス色でにぎわい、私はといえば、年賀状を早く作らねば!と焦りまくっているうちに、除夜の鐘を聞くことになるのだろう。2004/11/14