アベ工房気まぐれ日記レジンのブローチ

レジンのブローチ

先日、以前勤めていた時の同僚から、人形のブローチをオーダーしたいというメールを貰った。その依頼はこうだ「ブローチにする大きさで、動物の表現は難しいだろうから、動物じゃなく鳥や魚、植物でも良いし、素材もなんでもＯＫ。でもあまり気持ちの悪いものはＮＧ」・・・？？？

待てよ？彼女はネットができる環境にはいないし、私のHPはたぶん見ていない。公募展に出品した際の人形１点とプレゼントした版画1枚を見たことがあるだけのはず。私自身アクセサリーに縁はないし、作品として作ったことはないのだ。それに、彼女がアクセサリーの類いを身に付けていたのを一度も見たことがない。思うに、少しでも私の生活の足しになればとの彼女の気遣い・・・。でも、作品として発表していないものにお金を頂くわけにはいかないし、彼女には、以前上京した際にフレンチを御馳走してもらった恩があるので、なんとか考えてプレゼントにすることにした。

まずは布地を使ったもので考える。人形のブローチ、人形のブローチ・・・。私の動物人形の特徴としては別珍を使うこと、プリティーではないこと。あまり作風が違っていては私が作る意味がなくなる。別珍は少々厚めの起毛された綿の素材で、小さなものを作るにはあまり向いていない。１０cm程が限界ではないかと思える。

そして、どうしてもよくバザーなどに出品されている手作り感あふれるブローチになってしまいそうで、考えがまとまらない。そういったものがお好きな方もたくさんおられるとは思うのだが、私はあまり好きではない。布を使って、とても素敵なブローチを作られている作家さん方もおられるが、どうしても私にはいい案が浮かばず、布を使うことは断念することにした。でも、人形での依頼だったのだから、人形っぽいものもとりいれたい。で、以前から興味のあったレジンを使って、昔ブライス服のおまけに作ったフェルトの小鳥を固めて、ブローチの中に小さな世界を作ることにした。
イメージとしてはちょっと懐かしい感じ。私の版画の「おまけ」のモチーフになったもの。それはガチャポンのおまけで、カプセルの中に小さな小鳥が入っていて、カプセルを開けて中の小鳥を取り出してくれと祖母にお願いしたところ、ペンチでカプセルを割られてしまい、ショックで泣きわめいたエピソードを描いたものだが、その思い出のカプセルだ。

しかし、レジンに関する予備知識がほとんどなかった為、失敗の連続だった。レジンとは液体の樹脂で、硬化剤を混ぜて固めるとプラスチックになるものだ。まずブローチの原形になるものに大きめのビー玉を用意した。それをシリコンで型取りするのだが、某手芸雑誌の手作りボタンを参考に離型材なるものをビー玉にスプレーしてシリコンで型取りしたところ、ビー玉がシリコンにがっちり張り付いてしまい、失敗。

後で知ったことだが、離型材とはできあがったシリコン型にレジンを流し込む際に型にスプレーするものらしく、本来原形にスプレーするものではないとのこと。ガラスがシリコンにつきやすいのと、ビー玉の質があまり良くなかったことも相まって初めての型取はあえなく失敗に終わった。弟に相談したところ、ビー玉にリンレイ床用ワックスをぬってやってみるよう勧められ、やってみたところなんとか型取に成功した。

	いよいよレジンを型に流し込む。私が初めに購入したのはキャストという、ポリウレタン系のレジンだ。安価に惹かれて買ってしまったのだが、それがまた新たな失敗に繋がってしまった。
ポリウレタンレジンの失敗！気泡だらけ

ポリウレタンレジンは硬化が早く、作業が早くて、せっかちな私にはピッタリ！と思いきや、水分に反応して気泡ができる為、中に何かを入れるのは不向きで、フェルトで作った小鳥を入れたとたん、泡がたくさん湧き出てきて泡が抜け切らないうちに固まってしまった。結果は気泡だらけで、中がほとんど見えない状態に。結局、硬化に時間はかかるが、高透明な仕上がりのエポキシ系レジンを購入しなおすことに。

エポキシ系レジンは高価だ。でもレジンの品質は価格と比例するらしい。また、時間はかかるが、その分じっくり作業ができ、思い通りの仕上がりに？と思いきや、シリコンで型取りする際に原形になるものをツルツルのピカピカにしていなかった為、若干の曇りとキズが発生！！

結局ヤスリと模型用コンパウンドなる磨き粉をつかって磨き、最後にラッカーを吹付け、なんとか完成した。本やプロの方のサイトで見ると、簡単そうだけど、実際にやってみるとやっぱり難しいものだった。でも、失敗は成功のもとというではないか！今度はきっとうまく行く！同じ失敗は繰り返さないのだ！！と思いつつ、大量に残ってしまったポリウレタンレジンをどう使おうと思案中。
さて、かなり苦労した初めてのブローチを友人は気に入ってくれるだろうか。2005／3／27